Contemporary Art as a World Treasure. / 現代美術のハードコアはじつは世界の宝である展。
ポスター |
最近の展示を見て思うことは
「美術館の企画よりも、個人コレクションのほうが面白い!」
ということ…。
もちろん、たくさん所蔵する個人のコレクションから何を借りてくるのかは
各美術館のキュレーターの腕次第。
ただ、個人の資金力、こだわり、審美眼で厳選された作品は
やはり独特の迫力があり、
美術館の成り立ち・公共性、立場から選ばれた体系的なものとはちがう面白さがあります。
ちょっと横道にそれますが、最近みた面白かった個人コレクション展を3つ。
昨年観た新国立美術館の【アメリカンポップアート展】はジョン・アンド・キミコ・パワーズ夫妻のコレクション。
入口。 |
また、オペラシティアートギャラリーで見た【アートがあればⅡ】は9人の個人コレクターよりアートをお借りした展示でした。
入ってすぐ、驚きのアートが…。 |
ちなみに、きのう観てきたのはトムブラウンへの出資などでも有名なアパレル企業
クロスカンパニーの石川さんによるコレクション【幸せは僕を見つけてくれのかな?】展。
こちらもオペラシティアートギャラリーで。
映像作品からペインティング、そして立体作品など、幅広く収集しているようでした。
わたしは小泉明朗さんやミルチャ・カントルさんの映像作品が印象に残りました。
さて。
今回のハードコア展は台湾の企業、ヤゲオ・コーポレーションのCEOがコレクターで
ヤゲオ財団コレクションです。
超有名、破格の値段だったであろう
ウォーホル、
リキテンスタイン、
マン・レイ (私の知っている写真作品とは違い、絵でした!)、
ではじまり、台湾出身の画家の作品も多数。
当初、コレクターのピエール・チャン氏は
日本統治下の台湾で活躍する作家の作人のみを集めていたようです。
台湾にずっといた作家もいれば、アメリカやフランスに渡った方、あるいは日本でも勉強をした方もいます。
そういったこともあり、東洋の流れをくみながら、最終的にずいぶん違った作品になっています。
サンユウ作《蓮に白鶴》 |
色使いではなく、そのコントラストでとても華やか。
こんな絵が家にあるなんて、会社に行きたくなくなりそうです。
知らない作家でしたが、同世代で同じようにヌードをテーマにすることも多かった
藤田嗣治の7倍近くも市場で評価れているという
サンユウ(常玉)さんをはじめ、非常にパワフルでサイズも大きいものが多かったです。
サンユウさんの作品はマティスの《ダンス》のようなものもあり、すごく好きです。
今後チャンスがあればまたぜひ観たい!とおもわせる作品ばかりでした。
次の部屋では、これまた大好きなマーク・ロスコの絵がひとつ。
ちなみに、ロスコの絵 (壁絵) は千葉のDIC川村美術館にすばらしい “ロスコ・ルーム” があります。
電車&バスに乗ってでも行く価値あり!
杉本博司《最後の晩餐》も。 |
杉田博司さんの「海景」シリーズを眺めた後、
リヒター、
グルスキー。
昨年の新国立美術館で行われたアンドレアス・グルスキー展には出展されていなかった
《レイブ》 も!
また少し歩くと巨匠フランシス・ベーコンの作品。
最後のコーナーには、立体作品が。
美術館の正面に飾っていたマーク・クインの《ミクロコスコス(セイレーン)》 や
ポスターにも使われていた《ミニチュアのヴィーナス》 も。
今回の展覧会で、
サンユウ、ポール・チアンなどアジア系の作家の活躍を知りました。
トーマス・シュトゥルート、マルレーネ・デュマスなどもおもしろかったです。
コレクター、ピエール氏によると、「収集すること」は「アートとともに生きること」とは別軸。
仕事のプレッシャー、日々の忙しさなどで、一般人も普段から想像力・創造力が枯渇してしまうのではないか…などの不安を抱えていると思います。
そういったところで、アートは人を救う。
芸術は出会うものを無にすると思う。
誰であれ、何歳であれ、作品のまえではゼロになる。
作品と自分だけの密着した静かな世界になります。
解き放たれる自由な時間であり、新しいイメージを与えてくれる場であり
なにかを生み出す力さえ与えてくれそう。
精神的に必要なものだと思います。
ちなみに、このピエール・チェン氏は権威あるアート誌『Artnews』で
この2年間コレクターとして世界のナンバー10に入っているようです。
展覧会では、“所有する” ことを意識した説明が多く
アートマーケットでの位置づけや価格など、たくさんの情報を知ることができます。
2012年7月~2013年6月までの一年間、
アートプライスでナンバーワンはバスキア。
16番目は奈良美智さんで161作品で日本人ではナンバーワン。
21番目は村上隆さんで347作品。
これだけを見ると、村上さんはもしかして単価が安い…?なんて。
もう一度いってもいい!そう思えるエキサイティングな展覧会でした。
マーク・クインの《ミクロコスコス(セイレーン)》、横から見た図。 |
ゆっくり鑑賞して疲れたらカフェの利用も。
2階には、テラス席も選べる三國清三シェフのレストラン「ラー・エ・ミクニ」。
デザートプレートとハーブティ。 |
なによりも、熟年の給仕さんがテキパキ寡黙に働いていて、サービスもよく
とても穏やかな気持ちになります。
【参考】
東京国立美術館 展示会情報
現代美術のハードコアはじつは世界の宝である展 特設サイト
DIC川村美術館 「ロスコ・ルーム」について
三國清三シェフのレストラン「ラー・エ・ミクニ」
FASHION HEADLINE [ハードコアな現代美術展スタート。ベーコン、ウォーホル、クインら展示]
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