Beauty of the blank. / 余白の美。

『余白の美』。

一番好きな日本語です。

シンプルとかじゃく、無。
意図的な無。



シンプルとかミニマルとか、
近いかもしれませんが、
それはやはり西洋的な思考というか。


NHKのアナウンサーは、視聴者に考える時間を与えるため
あえてトピックスとトピックスのあいだに時間をあけると聞いたことがあります。

なるほど、民放のニュースは確かに断間なく
何かしら効果音とかが入っている気がします。

テレビ朝日系 「熱闘甲子園」 の一瞬無音になるタメだったり、

あだち充の漫画だったり。

“無” が与える効果って大きい気がしています。

世界遺産のあの法隆寺にも 『余白の美』 を見つけることができるようです。

参考)
「空白の美」の原点、法隆寺の謎を解く

大陸の宗教建築物や宮殿は、中心に建物が威風堂々と連なり、
左右対称のものがほとんどなのに対し、

紫禁城@中国。

タージマハル@インド。



法隆寺は真ん中が空白の状態になっており、感情移入がしやすいらしいです。


確かに「威圧感」というよりも「引き込まれる」ような作り。


左:現在の法隆寺。
右:四天王寺の南北・縦一列の伽藍配置。旧法隆寺もこのかたち。


伽藍配置という特徴的な造りです。


外国にこういう考え方があるのかな、とおもっていましたが
わたしのなかで唯一思いつくのはウォーホルの絵。


『エルヴィス』。@福岡市美術館。

セレブリティシリーズにも、わざと無地のスペースを残した作品が多くあります。


約103億円で落札されました。


こちらは 《死と惨事》 シリーズのひとつで、
当時サザビーズで過去最高額がついた作品です。

シルクスクリーンを使った転写により
しつこいほどの “反復” を好んだ彼の作品ですが
このようにブランク・キャンバスをあえて並べたものが多くあります。

この空白のキャンバスの理由についてウォーホルは
単に絵が大きい方が高く売れるから、とうそぶいていました。

ただ、この余白は完全に意味があるもので、
反復されたイメージの隣にあるため
その空虚感は大いに増幅されます。

時間の推移や虚無を感じたり
死後の世界を想像させたり…。

ウォーホルはどんなアーティストよりも死の問題をたくさん取り上げた人物だとおもいます。

『マスタード色の人権暴動』




意識的にブランクを見せることによって、
絵にはないはずのスピード感や
描かれた以上の “反復” を紡ぎ出します。

無名な人、セレブリティ、
いろいろな人たちのなかに普遍的な死を見つめる目。


ウォーホルの『余白の美』は
あくまでもオーディエンスに “考えて!” と
問いかけてくるような能動性を強く感じますが、
それでもそこから生まれる余韻や
無限につながる時間軸の再確認なと
近いものなんじゃないかなあ、
と思っています。

「現代アートなんて、アート(芸術)じゃない!」

そう思っていた時期も長かったですが
いま一番の刺激。


福岡市美術館、いってみたーい!


【参考】

入門に最適!

宮下 規久朗著
ウォーホルの芸術 -20世紀を映した鏡- 光文社新書


なんと通巻1000号記念特別号!
美術手帖 2014年3月号
「アンディ・ウォーホルのABC」


奇跡的に変えた1997年の美術手帖。
美術手帖 1997年12月号
「アンディ・ウォーホル」
こちらには、アップリンクの浅井 隆さんの寄稿も!豪華…。


福岡市美術館 公式サイト
近現代美術と古美術が中心でダリやミロも。

〒810-0051 福岡市中央区大濠公園1-6
9:30~17:30(入館は17:00まで)
7~8月は日曜、祝日を除き19:30まで(入館は19:00まで)
常設展は200円とリーズナブル!


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