A Man in a classic suit @Musée de l'Orangerie / オランジュリーの紳士。

近代の絵画の発展において
画商(ギャラリスト)やアートディーラーの存在は大きい。

特に、印象派がここまで大きな影響力・ムーブメントとなったのには
の存在があってこそ。


彼らは20世紀前半のフランスで印象派からエコール・ド・パリに至る名作を
蒐集したギャラリスト(画商)、そしてコレクターです。

そのなかでも、
印象派と縁が深い画商、ポール・ギョーム(Paul Guillaume)のコレクションを


ふつう、オランジュリーといえばモネ《睡蓮》

《睡蓮》 の展示。写真はwikipediaより。



ツアーなど短い時間でこの美術館を訪れると
《睡蓮》 の連作しか観ない方もいらっしゃると思います。

もちろん
オランジュリー美術館自体、
クレマンソーが 《睡蓮》 を飾るために作った場所ですし
傑作であることには違いありません。

ただ、巨匠が大作に挑むまでには
多くの人の力が必要だったことも忘れてはいけないでしょう。

《タンギー爺さん》。ロダン美術館蔵。wikipediaより。


例えば、タンギー爺さんのような画材屋さん。


ルノアールが描いた息子クロード。

たびたびモデルにもなっている奥様や家族。


そして、画商。


ポール・ギョームは死後、奥様の手によりそのコレクションの多くを寄贈され、
現在のオランジュリー美術館が収蔵するほとんどの作品を形成しています。

審美眼をもった有能なビジネスマンでだったポールの場合、
自分自身も美術品コレクターになりました。

欧米では美術商が年老いて生涯を終えるとき、
そのコレクションをまとめて国や美術館などに寄贈することは
大変美徳とされたようです。

実際、高額な相続税やその保管の問題もあり
寄贈せざるを得ない場合もあるのだとは思います。

ただ、個人コレクションがパブリックになることにより
現在わたしたちが自由に観に行けるようになったわけですし
また研究も進み、
結果としてアーティストや寄贈者である画商の名声が高まることになるので
これはこれで良い連鎖では、と。


ここ、オランジュリーでは作家も違えば年代も違う、
3枚のポールの肖像画をみることができます。

それぞれ画風にはちがいがありますが、
物静かな雰囲気や意思の強そうな目などは共通項じゃないかなあ、と感じました。



アンドレ・ドラン作。

帳簿をもったポール。
筆とキャンバスの画家からしてみると、まったく違う世界なんでしょうね。

アメデオ・モディリアーニ作。

こちらはかなり有名なモディリアーニの作品。

わたしにはgossip girlのチャックバスに見えるのですが…。
当時23歳とは思えないオーラがありますね。


キース・ヴァン・ドーゲン作。


こちらもダブルのスーツで。

描かれた時代は違えども、
濃紺のスーツにネクタイと
統一感のあるオーソドックスな着こなし。

きっと相当なオシャレさんだったのでしょう。


優秀なギャラリストなしでは
アーティストは作品を作ること、売ることはできません。

ポールさんご本人。



パトロン、批評家、マネージャー、そして友人。


王侯貴族、あるいは教会という一大権力がパトロンではなくなった時代、

オークションなどの二次流通市場がいまのように発達していないなか、

また公共の美術館などがなくひとが多くの作品に触れる経験がなかった状況で、

画家と画商の関係は特別なものだったのだなあ、と思います。


パリにはルーブルオルセー、そしてポンピドゥーなど
大きく立派な美術館もありますが、

こじんまりしたオランジュリーで
ゆっくりひとつひとつ鑑賞するのもオススメです。


【参考】

オランジュリー美術館
Jardin Tuileries, 75001 Paris
9時00分~17時30分


ロダン美術館
79 Rue de Varenne, 75007 Paris
10時00分~17時00分

わたしのとってロダン美術館は美術館のイメージを覆した
ベスト3に入る美術館です。
展示の仕方や個人コレクションの素晴らしさ、
自然と芸術の素敵な関係がここにはあります。

なんといってもこの美術館の庭は最高なので
お天気の良い日にピクニック気分で行ってほしいです。


※パリでは美術館の定休日は火曜日。気を付けて!

コメント

このブログの人気の投稿

Beauty of the blank. / 余白の美。

TASAKI 60th party / リブランディングの行方

Teaching House in Chelsea. / ニューヨークの無料英会話学校、TeachingHouse。